ニュークリアエイジ

再読した。涙は出なかったけれど、咽びたくなるくらい感動した。これほど素晴らしい小説ってなかなかお目にかかれない。
ぼくはこの小説の訳者である村上春樹の小説が大好きで、彼の長編の小説なんてすべて好きだ。けれど、このニュークリアエイジは、「ある意味では村上春樹のどんな小説よりも、優れている」と思う。
それが何であるのかは、村上春樹が解説しているとおりで、ぼくがここで付記するものはない。だけど、ぼくはこの本について語りたいことが実にたくさんあるように感じている。
「すべてを描ききっている。」掛け値なしに言い切って良いと思う。この小説を読めば、必死に何かにすがりつきたくなる。ぼくたち人間がもつ想像力、そしてそれに付随する感情。そういった言葉では表現できないことを、巧みな表現力で、一つの話として完成させている。
村上春樹の翻訳ものといったら、レイモンド・カーヴァーが1番有名で評価が高いと思うけれど、ぼくは敢えてティム・オブライエンが1番だと言いたい。ここまで想像力で勝負できる人物に対して、ぼくは深く感謝したい気分になる。
(もちろん訳者であり、素晴らしいアメリカ文学の読み手である村上春樹にも「ありがとう」と言いたい)