村上春樹を好きになること、嫌いになること
はじめに
ぼくは村上春樹の作品が好きだ。それにこの人の対談などを読んでいるとその頭の良さにまいってしまう。この人は自分の想像力を周りの影響を受けずに育てることができるのだろうと感心してしまうことが殆どだ。
しかし、ぼくはあまり村上春樹を好きなことを口に出そうとは思わない。さて、そのささやかな理由をここに書いておこうと思うのだけれど、あまり上手に書ける自信はない。(だからもしこれ以上読もうと思うのなら、相当の覚悟をしてください。)
村上春樹が描く俗物
殆どの村上春樹の作品では想像力を欠いた俗物を非難している。自分で考える術を持たず、始めから用意された枠組みの中でしか、思考できない人間たちを静かに鋭く糾弾している。
『ノルウェイの森』では名前がついて登場する人物以外はすべて俗物のような扱いだ。『ダンス・ダンス・ダンス』、『海辺のカフカ』に見られるように警察官への軽蔑は根強いものが見られる。