「変身」 - カフカ

正月は実家で読書をした。それがこの小説。
カフカの小説は最初にこの「変身」を読んで、その次が「城」それから「審判」「寓話集」「短編集」と読んで、そして今回また「変身」を読んだわけなんだけど、やっぱりカフカの小説の中ではこの「変身」が一番面白い。
カフカの小説を読んでいると、いつも思うことがある。『この作家は何を想いながらこの小説を書いていたのだろうか?』
カフカの物語の書き方はとても独特なものがある。物語の一番、核心的な謎が存在していて、普通なら主人公がその謎に向かって推理を進めていくものなんだけど、著者はそういう点には一切触れない。
(ちなみにぼくが思う「変身」の謎は、『なぜザムザは変身をしてしまったのか?』『変身した虫とは具体的にどのような虫だったのか?』の2つ)
ひたすらに主人公や周りの登場人物からの客観的事実しか語られない。読書にマジックの秘密をちらつかせながら、最後まで種を明かさない。
文体は三人称なのに、物語への視点は必ず主人公からの視点からしか書かれないのも大きな特徴だ。
すべての手の内を明かさずにこれだけ迫力のあるストーリーを描けるというのはとても凄いことだと思う。そういう意味では夏目漱石村上春樹と近いものがあるのかもしれない。(小説ってのは多少の謎を含むものですが…。含まないと面白くないし)
悲劇的な話なのに、どこか救いを感じる。カフカの小説に対して、そんなイメージを持ってます。